Kakuya Ohashi and Dancers

ザ・ワールド (B) --インスタレーション/トーク--

2013年、巨編SF小説『グラン・ヴァカンス』のダンス作品化によってコンテンポラリーダンスにまた新たな地平を拓いた大橋可也&ダンサーズ。
江戸以来の歴史と新たな開発の共存する東京・江東区を舞台に、リサーチに基づく複合型のプロジェクト『ザ・ワールド』を始動。
その過程で生まれた2つの面、リサーチャーが街から集めた素材をもとに振付を展開したダンスパフォーマンス(A)と、街の記録をとどめたインスタレーション/トーク(B)。
プロジェクトのモチーフは、吸血鬼――。

リサーチとダンスパフォーマンスが並行して(/交互に)進められるこのプロジェクトの特質をよく伝えるために、ダンスの上演とは別に、写真や音響、映像、トークを含む多角的な展示の場を設けます。まちなかでふと吸血鬼のけはいに気づき、そばだてられる耳、こらされる目。それらが捉えるのは吸血鬼の姿ばかりでなく、江戸開闢以来形づくられてきた土地の記憶であり、これから2020 年へ向けてさらに変貌していく土地の姿でもあるでしょう。

トーク出演:梅山いつき(演劇学者)※3/30のみ、大橋可也、長島確

構成:大橋可也
ドラマトゥルク:長島確
リサーチャー:加藤雄大、小林あずさ、坂上翔子、涌井智仁
写真:GO (go-photograph.com)

音・プログラミング:涌井智仁
造本・映像:石塚俊
空間演出協力:原口佳子(モリブデン)、ROCCA WORKS
コーディネーター:及位友美(voids)
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上演日:2014/3/29-30
会場:牡丹町商店街会館

主催:一般社団法人大橋可也&ダンサーズ
助成:芸術文化振興基金
協力:公益財団法人セゾン文化財団

このプロジェクトについて

「ザ・ワールド」は大橋可也&ダンサーズ初の、リサーチをベースにしたプロジェクトである。このプロジェクトは、ある土地(江東区)をリサーチし、それをもとにダンスをつくるプロセスを重ねていく、おそらく息の長いものになるはずだ。
リサーチをもとに、踊る?大橋が依拠する暗黒舞踏には「舞踏譜」という手法があり、テキストを身体への指示書として読み解きながら振付を行う。この考え方を応用すれば、どのようなテキストでも踊ることができる。地元の人のおしゃべりでも、リサーチの報告書でも、地図でさえも。
なぜ吸血鬼なのか?吸血鬼の物語には二系統あり、ドラキュラのようなスーパーモンスターが超常的な力を振るうタイプと、もうひとつ、種族としての吸血鬼がひっそりと移住してくるタイプである。後者の吸血鬼は、ひそかにまちに溶け込まなければならない。協力者を見つけなければならない。見た目よく、礼儀正しくないといけない(ゾンビと違って吸血鬼は招待なしには他人の家に入れないのだ)。こうした努力はすべて、血を吸うためである。異物としてのアーティストがまちへ出ていく際の問題の一端がここにある。
このプロジェクトの吸血鬼は、血のかわりに土地の記憶を吸う。そしてまちなかに点々と、ダンスを残していくのだ。

ドラマトゥルク 長島確