ヘヴィメタル
「ヘヴィメタル」
大橋可也&ダンサーズが、2013年から進めている、江東区でリサーチに基づいたパフォーマンスをつくるプロジェクト「ザ・ワールド」。モチーフは土地の記憶を吸う吸血鬼。「シーズン2」公演の締め括りとしておこなわれた劇場型公演「ヘヴィメタル」。
散歩型公演「クラウデッド」
「ザ・ワールドからの声」
ここでいうヘヴィメタルとは、文字通り重金属のことである。
かつて公害病として社会問題となったように、人間の身体にいったん取り込まれた重金属は容易に排出されることはなく、人体に危害をもたらしてしまう。
永遠の生を過ごし、人々の記憶を取り込み続ける吸血鬼たちにとって、蓄積し沈殿した記憶は身体にいかなる影響をおよぼすだろうか。
われわれ人間は、誰もがいずれ記憶を失い(排出し)、やがては残された身体も失ってしまう。
記憶は身体にとって重金属なのだろうか、あるいは欠かせない栄養素なのだろうか。
これは記憶と身体をめぐる物語である。
上演日:2015/3/25-26
上演時間:75分
会場:江東区文化センターホール
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出演(出演順):白井剛、平多理恵子、阿部遥、安達みさと、皆木正純、益田仲子、阿部秀宣、吉澤慎吾
振付・構成・演出:大橋可也
ドラマトゥルク:長島確
リサーチャー:加藤雄大、小林あずさ、坂上翔子、涌井智仁
ドラマトゥルク補:メル
音楽:涌井智仁、鼓次郎
映像:吉開菜央
衣装:ROCCA WORKS
照明:筆谷亮也
音響:牛川紀政
舞台監督:原口佳子(モリブデン)
映像スタッフ:石塚俊、加藤雄大、山本晴歌、横山八枝子
写真:GO
ドキュメントデザイン:石塚俊
フライヤーデザイン:agasuke
制作:坂上翔子、小林あずさ
制作協力:麻生琴、平岡あみ、柴田温比古、及位友美(voids)
撮影協力:そら庵
主催:一般社団法人大橋可也&ダンサーズ
共催:公益財団法人江東区文化コミュニティ財団 江東区文化センター
助成:芸術文化振興基金、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
認定:公益社団法人企業メセナ協議会
協力:公益財団法人セゾン文化財団
[プロフィール]
大橋可也&ダンサーズ(おおはしかくやあんどだんさーず)
1999年結成。ハードコアダンスを提唱、暗黒舞踏の方法論を基に現代社会における身体の在りかたを追究しているダンスカンパニー。2008年に発表した『帝国、エアリアル』では関連するフリーペーパーを制作、配布するなど、ダンスの枠組みにとどまらない活動をおこなっている。2013年、写真家GO 撮影による初の写真集「Books, Phantoms」を発売、日本SF界を代表する作家、飛浩隆による長編小説『グラン・ヴァカンス』をダンス作品化、発表した。2014年、「利賀演劇人コンクール2014」にて奨励賞を受賞。
大橋可也(おおはしかくや)
一般社団法人大橋可也&ダンサーズ代表理事・芸術監督。1967年、山口県宇部市生れ。1993~1997年、和栗由紀夫に舞踏を師事。1995年より独自の活動を始め、1999年より振付作品の発表をおこなう。2013年、「第44 回舞踊批評家協会賞新人賞」を受賞。Java/.NET/GeneXusなどの技術領域を中心にITのエンジニアとしても活動している。
長島確(ながしまかく)
日本におけるドラマトゥルクの草分けとして、コンセプトの立案から上演テキストの編集・構成まで、身体や声とともにあることばを幅広く扱う。ベケットやサラ・ケイン、ヨン・フォッセらの戯曲の翻訳のほか、さまざまな演出家や劇団の作品に参加。また『墨田区/豊島区/三宅島/淡路島在住アトレウス家』『長島確のつくりかた研究所』等のアートプロジェクトも手がける。ミクストメディア・プロダクト/中野成樹+フランケンズ所属。
加藤雄大(かとうゆうだい)
1990年、東京都生まれ。立教大学映像身体学科卒。大学では主に劇映画の制作について学ぶ。昨年に続きリサーチャーとして『ザ・ワールド(A)(B)』に参加。4月からは映像制作会社に勤務しつつリサーチャーと二足のわらじ。
小林あずさ(こばやしあずさ)
1989年生まれ。新潟市育ち。武蔵野美術大学芸術文化学科卒。東京藝術大学大学院でアートマネジメントを専攻。アートプロジェクトや舞台芸術のコーディネーターや制作として活動。趣味は料理と散歩と民藝品の器を蒐集すること。
坂上翔子(さかうえしょうこ)
1988年、新潟生まれ。日本大学理工学部建築学科卒。2013年よりリサーチャーとして『ザ・ワールド(A)(B)』に参加し、シーズン2ではリサーチャー兼制作として活動している。
涌井智仁(わくいともひと)
1990年、新潟県旧川西町生まれ。美術家。音楽家。大橋可也&ダンサーズには『ザ・ワールド(A)(B)』『バーサよりよろしく』等に音楽として参加。主な展覧会に『旅公演(どりふと)』(東京都美術館、2015)。
鼓次郎(こじろう)
2013年、都内ライブハウスを中心にソロでの和太鼓活動を開始。ジャンルレスに、ドラム・サックス・DJ・VJ 等との共演を重ねる。2014年よりフィリピンでのライブを行う。伝統芸能とは一線を画した表現を、改造和太鼓にノイズを重ねて連ねて、大和の奥底から引きずり出す。
吉開菜央(よしがいなお)
ダンサー・映像作家。1987年生まれ。言語的な表現を極限まで削り、視覚、聴覚などの五感に訴える映像作品を実写で制作する。過去作品は『ほったまるびより』『自転車乗りの少女』『みづくろい』など。
白井剛(しらいつよし)
振付家・演出家・ダンサー。1995年より、ダンス/パフォーマンス/映像製作などの活動を始める。1998年、ライブパフォーマンスを主体とした創作の場として「study of live works 発条ト」を立ち上げる。2006年からは新たな活動単位「AbsT」名義で活動。振付家/ダンサーとしてこれまでに幾つかの賞を受賞。音楽家・美術家・舞踊家等さまざまなジャンルのアーティストとプロジェクト毎に共演する形で、国内外にて作品を発表している。
平多理恵子(ひらたりえこ)
平多正於舞踊研究所所属、「SO&CO」ダンサー、laatikkoダンス教室主催。好き→家族、仲間、可愛い生徒達、海、本、カメラ、葡萄、ダンス、代官山蔦屋、ケーキ、映画。嫌い→パクチー、寒い日、少しでも足に合わない靴。
阿部遥(あべはるか)
6歳よりダンスを始め、日本女子体育大学舞踊学専攻卒業後、MOKK、Odorujou等の作品に参加。2011年『驚愕と花びら』への出演をきっかけに以降『OUTFLOWS』『グラン・ヴァカンス』『ライノ』等の大橋可也振付作品に出演。
安達みさと(あだちみさと)
慶應義塾大学、東京藝術大学卒。在学中、酒井幸菜とのユニットでラボ20♯18に出演。2006年「ダンスがみたい!8」新人賞受賞。ソロ、酒井作品出演他、永谷亜紀作品で三浦宏之とのデュオなど。近年はPVやライブに出演、振付助手もする。
皆木正純(みなきまさずみ)
1995年、渡仏。1997-1998年、オーディションを経て、ストラスブール国立劇場などで上演された演劇に出演する。2000年11月帰国。以後、演劇、自主制作映画などに携わる。2005年より、大橋可也&ダンサーズに参加。
益田仲子(ますだなかこ)
(公財)井上バレエ団出身。2005年度橘秋子記念財団奨学生。GYROTONIC®・GYROKINESIS®認定トレーナー。AtelierLeChat主宰。舞踏を有科珠々、大橋可也、コンテンポラリーダンスを櫛田祥光に師事。
阿部秀宣(あべひでのり)
やりたいことを探してうろつくこと、自分とは違う人と出会うこと、そして活動に出会うことが重要なのです…そんな訳で今夜、東陽町で踊ります。
吉澤慎吾(よしざわしんご)
1990年5月25日生まれ、俳優・ダンサー。立教大学現代心理学部映像身体学科にて演劇とダンスについて学ぶ。また大学在学と並行し、文学座研究所にて3年間演技を学ぶ。2014年8月から劇作家・松田正隆率いるマレビトの会プロジェクトメンバーとして活動中。
「ザ・ワールド シーズン2」上演にあたって
小野不由美の『屍鬼』に登場する吸血鬼たちは、その願いが叶えられることがないことを知りつつ、自分たち吸血鬼だけの世界を作ろうとした。吸血鬼が生きていくためには、人間を排除することはできないのに。
僕たち人間も、人を必要としていると同時に、人を傷つけ、人に傷付けられる存在である。
この「ザ・ワールド」も、観客となる人々、協力者となる人々、出演者たちをはじめ、多くの人との関わりによって成立している。その関係はいっときのものかも知れないけれども。
あやうくはかない関係を築き上げること、それは「世界」を構築していくことだろう。
僕たちは、このプロジェクトを通じて「世界」を構築し続けていく。
大橋可也